M&Aを実際に行うには、たくさんのステップを踏む必要があり、売り手企業と買い手企業のどちらにも負担がかかります。その負担を少しでも軽くする上で重要なのが、できるだけスムーズにM&Aを行うことです。トラブルを回避し、円滑に交渉を進めることができれば、M&Aによる負担は最小限のものに抑えることができるでしょう。

そのためには、事前にM&Aの基本的な流れを知っておくことが大切です。買い手企業が意識すべき点に着目しながら、M&Aの基本的な流れについて押さえていきましょう。

M&Aを行う妥当性を明らかにしておく

具体的な行動に移す前に、なぜM&Aを行う必要があるのかを今一度明確にしておきましょう。
まず検証しておきたいのが、M&Aによって自社が得られる効果です。企業としてメリットがないことに安易に手を出すのは不適切なのはもちろんのこと、得られるであろうメリットについても具体的に検証しておく必要があります。「事業規模の拡大を期待して」という漠然とした目標ではなく、いくらくらいの効果が期待できるのか、M&Aにかけるコストやリスクと天秤にかけても行う価値があるのかを検証し、M&Aの妥当性を見極めましょう。

また、課題解決のためにいきなりM&Aを検討するのではなく、たくさんある手段の一つとしてM&Aを考え始めることが大切です。ほかにもっと良い手段はないか、ほかの手段と比べてM&Aはどれくらい効果があるのかなど、ほかの手段も検討した上で妥当性を明らかにする必要があります。

さらに、M&Aを行う明確な目的を設定しておきましょう。「自社が抱える問題解決のため」「新規分野の参入」など明確なゴールがあることで、どのような企業を買収するか、どのようにM&Aを進めていけば良いのかを検討しやすくなります。自社内だけで十分な検討ができない場合などは無理して結論を出さずに、専門家のアドバイスを求めることも重要です。

M&A専門会社と契約を結ぶ

十分な検証によりM&Aの方向性が決まったら、M&A専門会社と契約を結びます。M&A専門会社と契約せずに自社だけでM&Aを行うことは不可能ではありませんが、M&Aを実施するための手続きは多岐にわたり難しいため、M&A専門会社の手を借りるのが一般的です。

M&A専門会社を選定する場合には、実績や取り扱い案件の規模を確認するのはもちろんのこと、料金体系や報酬面も十分に考慮した上で最適なM&A専門会社を選ぶようにしましょう。

M&Aを決意し専門会社に委託する場合、いくつか気をつけなければいけない点があります。
まずはM&A専門会社の規模です。大規模な専門会社ほど豊富な情報を持っており、たくさんの売り手企業から買収先を探すことができますが、その反面担当者による細やかなサービスは期待できない傾向にあります。反対に小規模な専門会社はサービス面で充実しているものの、十分な情報量を持っていない可能性があります。どちらのタイプが良いかは、M&A専門会社に何を求めているかで異なるので、どのようなことをどれくらい任せたいのか明確にした上で委託先を探すのが良いでしょう。

また、自社や相手先が特殊な業界であれば、その業界に特化したM&A専門会社に委託した方が、M&Aをスムーズに行える可能性が高くなります。特殊な業界を専門としているM&A専門会社ならばマッチングしやすくなる上に、業界特有の業法や慣習に配慮して手続きを進めてもらえるでしょう。

売り手企業に対するアプローチ

売り手企業にアプローチするには、まず買収先の候補を決めなければいけません。M&A専門会社に候補となる会社をいくつかリストアップしてもらい、その中から条件面や買収価格などを検討して選んでいきます。
買収先を絞り込んだら秘密保持契約を結び、具体的に買収候補先の会社と交渉を進めていくことになるでしょう。経営者同士の面談なども行って、買収できるように売り手企業にアプローチしていきます。

M&Aを行う上で最も時間がかかるのが相手探しです。縁があればM&A専門会社に委託してすぐ見つかることもありますが、逆になかなか見つからないということも珍しくはありません。M&A専門会社の中には、早く結果を出そうと強引に契約を勧めてくる会社もあるので、買収先が本当に適切か焦らずに見極める必要があります。

M&Aでは「秘密保持に始まり、秘密保持に終わる」というのが鉄則です。そのため、売り手企業を探す段階ではノンネームシートと呼ばれる企業名が伏せられた企業の概要書を見て、買収先に相応しいかどうかを検討していきます。ノンネームシートは多くの買い手企業の目につくので、この段階ではどこの企業かを知ることはできません。
ノンネームシートから候補の企業を絞り込んだら、相手先の企業と秘密保持契約を結んでさらに詳細な情報を開示してもらいます。この段階で相手先企業がどこの企業か判明します。開示してもらった情報により買収候補先が2~3社ほどに絞り込むことができたら、次は経営者同士でお互いの経営理念や経営状況などを擦り合わせるトップ面談です。トップ面談により「この企業を買収したい」と決まったら、基本合意契約を結んで具体的な条件決めや手続きへと移行していきます。

M&Aを委託する場合にはさまざまな費用が発生しますが、M&A専門会社によっては売り手企業へのアプローチを行う際にも費用が発生することがあります。M&Aにかかる費用について見ていきましょう。
基本的な報酬はM&Aの取引価格に応じて各社が定めた割合から算出されることがほとんどです。その場合は最低報酬額がいくらに設定されているかも確認しておくと良いでしょう。
その他には、相談料、着手金、一定期間の調査や相手先訪問などの業務に対して支払う月額固定料金のリテーナーフィー、基本合意の成功報酬としての中間金、買収対象の財務内容調査のためのデューデリジェンス費用などが挙げられます。
相談料は初回無料の会社が多く、相談料がまったくない会社もあります。

また、M&Aを委託した段階で支払う着手金の相場は、特に基準となるようなものがありませんが、大体数十万円程度です。しかし、M&Aの対象となる会社の資産規模に応じて変わることがあるため、場合によっては数百万円と高額になることもあります。
その他、完全報酬型として最終契約までのコストは一切かからない専門会社も増えてきています。

デューデリジェンスを適切に実施する

デューデリジェンスとは買い手企業が買収先の企業に対して行う調査で、基本合意までに擦り合わせてきた内容に関して詳細に調べることを指します。デューデリジェンスは時間やコストがかかりますが、売り手企業が開示してきた情報が正確なものかどうかを確認するためには欠かせないステップです。

デューデリジェンスは財務はもちろんのこと、法務、人事、事業など広範囲にわたって行われます。また、デューデリジェンスは弁護士や公認会計士などの専門家に依頼しなければいけないため、その費用や実施期間についてあらかじめ決めておく必要があるでしょう。デューデリジェンスにかかる期間は売り手企業の規模によって大きく異なりますが、中小企業の場合で現地調査に1~4日、レポート完成までに1~2週間ほど要します。

基本合意までに開示されていた情報とデューデリジェンスの調査結果が異なった場合は、基本合意契約の条件などを見直すことになります。デューデリジェンスは売り手企業が抱えているリスクを洗い出す最後のステップになるので、信頼できる専門家に任せることが重要です。

条件とスケジュールを取りまとめる

デューデリジェンスを行った結果問題がなければ、M&Aをさらに進めるために条件面やその後のスケジュールについて決めていきます。売り手企業と買い手企業の両社が遵守すべき事項や守秘義務など、お互いの認識にずれが生じないよう細かい部分までしっかりと擦り合わせることが大切です。また、この時点で最終的な買収価格についても提示し、売り手企業と合意しておきましょう。
ここがM&Aの条件の見直しができる最後のチャンスです。契約締結後にトラブルが起きないよう、デューデリジェンスの結果などを改めて見直し、慎重に契約まで進めるようにましょう。

最終契約書の締結と譲渡代金の受け渡し

条件などがすべてまとまったら、いよいよM&Aは最終交渉段階となり、最終契約書を取り交わします。最終契約書には、株式や事業の譲渡方法や買収価格などを盛り込みます。最終契約書の内容次第では、M&Aに関するトラブルが起きる場合もあるので、内容には細心の注意を払わなければいけません。

無事最終契約書の締結ができたら、買い手企業は売り手企業に対して譲渡代金を支払います。決済が完了したら、売り手企業から引き継いだ経営資源の名義変更や登記など、さまざまな事務手続きを経て、M&Aを完了させます。

表明保証条項を盛り込んでおこう

最終契約書には、表明保証条項をきちんと盛り込んでおきましょう。表明保証条項とは売り手企業が買い手企業に対して、開示している情報に誤りがないことや、簿外債務のような不都合な情報を隠していないことを約束し保証する条項のことを指します。

デューデリジェンスをいくらしっかり行っていても、調査できる範囲は限られています。表明保証条項はそんなデューデリジェンスで発見できなかったリスクに備えるためのものです。したがって、少しでもリスクを回避するために、表明保証条項はしっかり最終契約書に記載しておきましょう。
もし売り手企業が表明保証条項に違反した場合は、買い手企業は売り手企業に対して損害賠償請求や、M&A契約の解除を行うことができます。

M&Aにおけるトラブルで多いのが、この表明保証条項に関するものなので、表明保証条項の作成は慎重に行わなければいけません。何か問題があった時には表明保証条項の細かい文言が争点となることもあるので、専門家の力を借りて不備のない表明保証条項を作成する必要がります。

基本的な流れを理解してスムーズに交渉を進める

M&Aには、売り手企業とのマッチングから始まり、売り手企業へのアプローチに調査、そして契約の締結など、実にさまざまなステップがあります。ステップが多い分、売り手企業と買い手企業の双方に時間やコスト面で大きな負担がかかってしまいます。M&Aによる負担を減らすには、基本的な流れを理解しておき、円滑にM&Aを進められるように準備しておくことが大切です。

しかし、どれだけM&Aへの理解を深めても、会社や事業の買収は素人には難しいもの。会社や事業の買収を検討しているのならば、一度SKC会計グループのSKC北九州M&Aセンターに相談してみてください。

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