団塊の世代が定年を迎えることで労働力が不足する現象が日本中で問題になっています。しかし、団塊の世代が定年を迎えつつあるのは、労働者だけではありません。経営者の高齢化も同時に問題となりつつあり、中小企業庁も懸念を示す事態となっています。せっかく継続してきた事業であっても、後を任せる人がいない場合は廃業せざるをえないのが現実です。そこで大切なのがスムーズな事業承継で、事前の計画を綿密に立てておくことが重要になります。この記事では、事業承継の計画を立てる際にどのような点を注意すべきかについて紹介します。

事業承継の計画を作成する意義

事業承継を行うためには、さまざまな手続きが必要です。スムーズな事業承継を行うためには、「いつなにをするか」ということを誰が見てもわかるようにしておかなければいけません。きちんとしたスケジュールを立てずに事業承継を進めてしまうと、次に必要な手続きがなにかわからず、余計な手間がかかります。最悪の場合、後継者のなり手が見つからなくて事業承継が失敗してしまうかもしれません。そのような事態を避けるために、事業承継のスケジュールをきちんと立てたうえで手順通りに進めていくことが大切です。

事業承継で作成する計画書には具体的なスケジュールはもちろん、事業承継の目的も記載するようにしましょう。目的を記載することで、後に残される従業員たちにも長期的な視野に立った計画を示すことができ、支持を得られやすくなります。また、事業承継において後継者を誰にするかは非常に重要な項目です。安易に決めつけず、十分に時間をかけて検討しましょう。計画書の作成にあたっては事業承継に必要なすべての作業を書き込むことになるので、手間がかかります。しかし、計画書が詳細であればあるほど、従業員や取引先、金融機関といった関係者からの協力が得られやすくなるので、しっかり作成するべきです。

計画を立てる前に下準備を整えよう

誰が見てもわかる事業承継計画を作成するためには、下準備を整えておくことが大切です。なぜなら、いきあたりばったりで作成してしまうと事業承継の効率が悪くなって、計画書を作成する意味がなくなってしまうからです。下準備でまず行っておきたいことは、自社の状況分析だといえます。損益計算書や貸借対照表といった決算書の分析はもちろん、経営者個人の出資状況を確認するために、経営者の資産状況も確認しておきましょう。また、後継者を企業内の人材から抜擢するのか、外部に任せるのかによっても準備のために要する対策や期間は異なります。想定している後継者に合わせた計画書を作成することが重要です。

さらに、事業承継を成功させるために意識しておきたいポイントとして、「会社の価値を高めておくこと」が挙げられます。ブランド力を高めておくことや、過剰な在庫を整理して負債を圧縮しておくといった対策を取ることで、後継者に魅力を感じさせる企業になるよう心がけましょう。そのほかの注意点としては、株式や資産配分が挙げられます。後継者に配分する株式数があまりにも少ないと、承継後の事業運営に支障をきたす恐れがあるからです。承継後にスムーズな経営を行ってもらうためにも、できるかぎり後継者が3分の2以上の株式を取得できるように配慮してあげましょう。

計画作成にはタイミングも大事

事業承継計画書を作成する際は、タイミングを見定めることも重要です。事業規模にもよりますが、スムーズな事業承継を行うためにはそれなりの期間が必要になります。思い立ってすぐにできるものではないので、余裕をもって作成するようにしましょう。計画を作成する適切な時期は、事業規模や企業を取り巻く環境にもよるので一概にはいえません。
しかし、中小企業庁が示している「事業承継ガイドライン」では、経営者が60歳を迎えたタイミングで事業承継計画を立てることを奨励しています。経営者のなかには60歳で事業承継を考えるのはまだ早いのではないかと考えて抵抗がある人もいるでしょう。しかし、事業承継は一朝一夕にできるものではないので、経営者が健康なうちに進めるのが無難です。

また、事業承継計画書を作成するタイミングとしては、自社株の評価額を算定した後に行うと効率的です。自社株の評価額がわかれば事業承継のために必要な資金額が把握しやすくなるので、具体的な行動も起こしやすくなります。

具体的に盛り込むべき内容

事業承継計画書に盛り込む内容は、「後継者に関する事項」「事業承継を行う時期」「具体的な手段」などが挙げられます。とくに事業承継を行う時期については、自社の経営戦略と合わせて考えることが大切です。事業承継後に会社を引っ張っていくのは後継者になりますので、可能であれば経営者と後継者で中長期戦略について話し合ったうえで時期を決めるとよいでしょう。また、事業承継計画書には「後継者の教育」「会社資産の譲渡」「取引先および金融機関への対応」についても明記しておくことが望ましいです。具体的に明記しておくことで、従業員や取引先を安心させる効果が期待できるので、「いつまでにどのような形で進めるか」についてまで記載しておきましょう。

一般的に事業承継は10年程度かけてじっくりと進めていくものですが、1年ごとの具体的な計画も立てておくと実際の進捗状況を把握しやすくなるので作成しておきましょう。

社内のコミュニケーションを円滑にしておく

事業承継では社内のコミュニケーションをよくしておくことも重要です。なぜなら、将来的な会社の存続がかかっているので、従業員たちの雇用にも直接影響を与える可能性があるからです。そのため、事業承継計画書を一部の経営陣だけで決めてしまうと、従業員からの反発を招いたり、社内で対立する派閥ができてしまったりして、現場が混乱する可能性があります。現場の従業員にもわかるように、できるだけオープンな形で事業承継計画書を作成しましょう。

また、事業承継の方向性がある程度決まったからといって、必ずしもすぐに行動に移してはいけません。スムーズな事業承継を行うためにも、計画に反発しそうな人にあらかじめ根回しをしておくことも重要です。そのためには、あまり表立って動き回らないほうがよい場合もあるので、気をつけましょう。

根回しがすんでから本格的に事業承継計画書の仕上げにとりかかるとよいです。事業承継計画書は具体的に記載することが重要ですが、最初から細かなことまで決めすぎるのもよくありません。後継者や従業員の意見を聞いてから柔軟に変更できる部分も設けて計画に幅を持たせておくと、より実行性の高い計画書が作成できます。

手順を踏まえて準備に取りかかろう

事業承継は一般的に10年間という比較的長い期間で行っていくものです。現場に混乱を起こさずにスムーズな事業承継を行うためには、じっくり時間をかけて綿密に行っていかなければいけません。そのためには、事業承継の基本的な手順を踏まえて準備にとりかかることが大切です。SKC会計グループのSKC北九州M&Aセンターは北九州を中心とした地元のM&A案件を紹介しています。M&Aは上手に活用することで単なる事業承継にとどまらず、事業の発展につながるケースもあるのが魅力です。SKC北九州M&Aセンターは事業承継を検討している企業の支援を中心に活動していますので、会社や事業の買収・売却に関するお悩み事があればぜひご相談ください。

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