M&Aでは、入念な計画と実行力が求められます。また、買い手企業にマッチする売り手を見つけることも重要です。これらの手続きを進めていくには、「M&Aのメリット」を理解しておく必要があります。M&Aが自社にどのような利益をもたらすかを把握しておくと、失敗するリスクは低くなります。そして、M&Aの後で企業力をさらに高めることができるでしょう。この記事では、買い手企業にとってM&Aを行うメリットは何なのかを解説していきます。
市場シェアの拡大につなげられる
買い手企業がM&Aを行う大きなメリットとして「市場シェアの拡大」が挙げられます。市場シェアは、業界内の支配力と密接に関係しています。シェアが高まると企業の支配力も強まり、自社の方針に沿った経営を実現させやすくなるでしょう。たとえば、支配力が弱いと純粋な価格競争にも参戦せざるをえません。商品の利益率が少なくなるため、販売数が伸びても黒字につながりにくくなるのです。しかし、支配力が強まると価格以外の魅力を訴求できるようになり、利益率も上昇します。また、競合他社の顧客、経営資源を取り込めるのも企業力アップにつながります。
さらに、業界内でのブランド力強化もメリットといえるでしょう。そもそもブランド力とは、ある企業が長年積み重ねてきた業績の上に成り立つものです。そのため、どんなに高品質の商品を提供していたとしても新興企業にはなかなか評価が定着しません。しかし、M&Aによってすでに知名度のある企業を取り込めば、その企業のブランド力も手に入れられます。そして、ブランド力は商品の信頼性にもつながるので、さらなる売上も目指せるようになるのです。短期間で業界内の地位を高めたいときに、M&Aは効率的な手段といえるでしょう。
事業規模が拡大することでコスト削減できる
M&Aには「コスト削減」というメリットもあります。M&Aによって事業規模が拡大すると、仕入先や流通業者に対し大口の交渉ができるようになります。つまり、「たくさん発注をするのでそのぶん割引してほしい」と持ちかけることが可能なので、原料費や流通費が安くなっていくのです。経費が削減されるぶん、利益率も高くなるでしょう。
そして、事業拡大にはつきもののさまざまなコストも削減されていくでしょう。たとえば、事業を大きくしようと思えば店舗や営業所といった拠点を増やさなくてはなりません。製造業においては、新たな工場も必要です。しかし、これらの施設を建造するには莫大なコストがかかります。費用を確保できたとしても、完成までには長い時間を要します。これらのデメリットを踏まえ、結局はアウトソーシングなどを利用せざるをえないのが課題でした。M&Aでは、競合他社の持ち物だった店舗や工場を自社のものにできます。一から建造するコストを減らせるだけでなく、事業展開のスピードも速まります。それに、店舗や工場は借り物でなく自社の資源なので、好きなように活用していけるのも魅力です。
異業種に参入する足がかりとなる
M&Aは「異業種参入」の足がかりにもなります。どんなに経営状況のいい企業でも、同じ事業で同じターゲットばかりを狙っていると頭打ちが訪れがちです。また、時代の流れとともに業種も変化を強いられます。現時点で好景気の市場が、将来的にも継続していくとは限りません。企業が好調であるときほど、異業種へと進出する意識が大切なのです。しかし、まったく違う分野にいきなり進出するのは至難の業です。業界をリサーチし、人材を育成し、会社全体でノウハウを身につけるのはかなりの時間とコストを要するでしょう。こうした問題を一気に解決できるのがM&Aです。
M&Aでは、自社になかったノウハウを獲得できます。異業種の企業を買収して、そこのノウハウやスキルを承継すればスムーズに進出が実現するでしょう。さらに、これまで網羅できていなかったエリアやターゲットにも手を広げられます。これまでの事業が停滞する前に、新たな市場を開拓できるのはM&Aの利点です。もちろん、まったくの異業種以外も買収先になりえます。むしろ、事業内容が似ている企業を買収するからこそ、スキルが強化されてさらなる成長を遂げられるケースもあります。また、関連性の高い分野に進出して、中心を担う事業との相乗効果を狙うことも可能でしょう。
自社の弱点をカバーできる
「弱点のカバー」を目指す企業にも、M&Aは効果的な手段になりえます。多くの企業が「不採算事業」と呼ばれる、結果のともなわない部門を抱えています。不採算部門を強化するには人材を育成したり、最新のシステムや機材を導入したりするなどの方法があるものの、いずれも短期間では無理です。また、コストも発生するので効率的な方法とはいえません。そのうえ、不採算事業に手をとられているうちに、ほかの事業にも悪影響が出てしまう危険も生まれます。そこで、不採算事業を強化できるノウハウやスキルを持っている企業を買収すれば、スムーズに弱点を克服できます。
また、売り手企業のターゲットを承継できるのもメリットでしょう。不採算事業によって生まれていた赤字が補填され、利益が伸びます。しかも、一時的ではなく、安定した売上を確保できるのはM&Aのポイントです。不採算事業がなくなれば、これまで割かれていた時間と費用をほかの事業に注ぎ込むことができ、企業成長へとつながります。営業や販売、生産などにポジティブな連鎖が生まれるといえるでしょう。そのためには、自社の弱点を明確化してマッチングする売り手企業を見つけ出すことが重要です。
事業を多角化することにつながる
M&Aは「事業の多角化」にも役立ちます。どうして多角化が必要なのかというと、中心となる事業だけに力を注いでいると売上の増減が激しくなる恐れが出てくるからです。食品業であれば季節によって売れ筋は変わりますし、アパレル業や出版業にも流行の波が訪れます。こうした売上の変動を極力抑え、いかに継続的に利益を上げていくかは企業経営者にとっての課題といえるでしょう。また、中心となる事業の市場が下火になったとき、代わりになる事業がなければ企業の経営は傾いてしまいます。M&Aは事業を多角化することでリスクを分散し、収入源を確保し続けるための手段なのです。そして、安定した経営の中で長期的な企業成長を思い描けるようになります。
M&Aによってほかの企業の人材、ノウハウが加わると事業の可能性も広がっていきます。自社だけでは思いつかなかったアイデアやシステムを採用することで、事業の幅を拡大可能です。ただし、事業の多角化では、まったく関連の薄い業種とM&Aを行うと失敗してしまうことも珍しくありません。売り手企業のノウハウを上手く取り込めず、多角化に時間がかかってしまうからです。一方、近しい業界から売り手企業を探すと比較的、事業の多角化の成功率は高まるでしょう。
成長のために必要な時間を短縮できる
「時間の短縮」もまた、M&Aのメリットです。一般的に、新規事業を始める際には準備期間を長く設けなくてはいけません。戦略を立てたり、資金を集めたりしている間にタイミングを逃してしまうこともありえます。それに、人材の教育も必須です。新しい事業のリーダーを任命し、プロジェクトメンバーを選定していくだけでもたいへんな時間がかかります。そのうえ、事業を担えるだけのスキルを身につけるまでには相応の教育を受けさせなくてはなりません。そのほか、「顧客を開拓」「組織を再編」なども企業成長に大切なプロセスです。
しかし、M&Aではすでに十分なスキルと戦略を擁している企業を取り込むため、一から事業を立ち上げる手間を省略可能です。市場が活性化している間に新規参入し、利益を得られるでしょう。また、経営資源を事業の成長のために注ぎ込めるので、スタートアップの資金を心配する必要がなくなります。確かにM&Aでも費用は発生するものの、企業成長にかける時間が大幅に省略できることを思えば、むしろ収支はプラスだといえます。すでに成功している企業の資源を受け継ぐので、リスクもわずかです。新規事業に手を伸ばしたいなら自社の資源だけに頼らず、「事業を買う」という発想も持ってみましょう。
M&Aを行う目的をクリアにしておこう
いろいろなメリットがM&Aにはあるものの、実行後も成長ができていない企業は少なくないのが現状です。原因としては「目的が曖昧になっている」点が挙げられます。M&Aとは単に企業を買収し、自社の規模を拡大させるだけの行為ではありません。買い手企業と売り手企業の目的が一致し、経営がプラスに傾くのがM&Aの意義です。こうした意義を見失ってしまうと、M&Aに不要なコストがかかってしまいがちです。また、買収後も売上が伸びず、経営状況が好転しないケースも出てくるでしょう。「事業の多角化を目指す」「弱点をカバーする」といった目的をはっきりさせ、売り手企業を選ぶようにします。
目的が見えてくると、売り手企業に求める条件も明確になります。「自社にないスキルがある」「優秀な人材がそろっている」など、条件に合わせて売り手候補を絞り込めるでしょう。ただし、売り手企業のリサーチには専門的な視点も必要です。それに、売り手企業が経営状況について偽の情報を伝えてくることもあり、買い手企業には慎重さが求められます。必要があれば、専門家からアドバイスを受けて参考にしてみましょう。自社だけでは気づけなかった意見を与えられることで、より安全にM&Aを進められます。ヒアリングによって、M&Aの目的を固める手助けもしてもらえるでしょう。
タイミングを見極めることが重要
M&Aを成功させるためには、しかるべきタイミングでしかるべき売り手企業と出会うことが重要です。専門家の意見を聞くなら、SKC会計グループのSKC北九州M&Aセンターに相談してみましょう。SKC北九州M&Aセンターは福岡県北九州市を拠点に活動している企業コンサルタントです。M&Aについて幅広い知識を有しており、企業を的確にサポートします。グループ内には税理士法人があり、必要な場合は、税務的なアドバイスも受けれること、事業承継に関する費用を具体的に聞けるのも大きな魅力です。M&A後の経営戦略も含めて、長期的な事業拡大を目指すのにぴったりの相談相手です。
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