株式の取得や事業譲渡、会社分割や合併、広義としては、合弁会社設立を含めた資本提携や業務提携といった意味を持つM&Aですが、会社同士がおこなうものと思っている方も多くいるでしょう。しかし、実はM&Aは会社同士がおこなうだけでなく、個人でもおこなうことが可能なのです。ここでは、個人でM&Aをおこなうメリットや流れ、どのような点に気をつけるべきかなどを解説していきます。個人でのM&Aに興味がある方は参考にしてみて下さい。

個人がM&Aを行うメリット

M&Aというと、会社同士がおこなうイメージがあるかもしれませんが、個人でもやり取りがおこなわれています。このように、個人がM&Aを行う動きが活発化しているのは、自分のビジネスを大手企業に譲渡したり、小規模ビジネスを買収したりするニーズが高まっていることが背景にあるといえるでしょう。また、経営者の高齢化や後継者不足といった問題も背景にあるのかもしれません。

経営者の高齢化という側面に関しては、日本では少子高齢化に伴い、個人や中小企業経営者の平均年齢は徐々に上がっていることが分かります。後継者不足という問題に関しても、60歳以上の経営者の約半数以上が後継者不足を理由に廃業をせざるを得ない状況になっているのには、事業に将来性がないことや、子供や孫などに事業を継ぐ意思がないというもの、後継者として適切な者がいないといった理由があるようです。

また、経営者の高齢化により、専門家、多様化、スピード化した現在のビジネスの流れについていくことができず、廃業になることもあるようです。さらに、事業を売却する側としてはM&Aによって引退のタイミングを決めることができ、老後の備えを形作ることができるというメリットも存在するといわれています。そのため、逆に、老後の資産形成として中小企業を買収したいというニーズも増加しています。リタイアしてからの生活を豊かなものにしたいと考える人の中には、40~50代の間に個人M&Aで中小企業を買収してオーナー社長として存在し、資産形成に役立たせると考えている方もいるのです。

個人でM&Aをおこなう場合、売る側は必ずしも後継者不在や高齢化といったマイナス要素だけで動いているわけではありません。ITベンチャーなどの出口戦略で大手企業に譲渡することもあります。一方、買収する側はあえて小規模ビジネスを買収し、老後の資金の足しにしようと考えるなど、さまざまな価値観によって選択されているといえるでしょう。

M&Aを実施したいときの流れ

M&Aを実施する際の流れに関してですが、M&Aを検討する際は、公的機関である「事業引継ぎ支援センター」を利用する方法もあります。「事業引継ぎ支援センター」というのは、産業競争力強化法にもとづき2011年から経済産業省がおこなっているものであり、後継者がいない小規模事業者のマッチングに取り組んでいるのです。後継者不在の中小企業経営者のための公的なサポートセンターとして、全国に設置されています。なお、小規模事業者のマッチングに関しては、マッチングがおこなわれている場所が限られているので、自分の希望するエリアが含まれているかどうか、事前に確認する必要があります。

また、事業引継ぎ支援センターでは、後継者がいない方の場合の事業承継の相談がメイン業務となっていて、マッチングはメインではおこなわれていないので注意して下さい。ちなみに、基本的には法人同士のマッチングが多いので、個人でマッチングをして欲しいという場合には、あらかじめ紹介してもらえるかどうかを聞いておくと良いでしょう。事業引継ぎ支援センターで紹介してもらえる案件としては、小規模のものが多くあるようです。

このほかにも、M&Aに関するマッチングサイトを利用して、M&Aの対象会社を見つける方法もあります。マッチングサイトでは、売り手側と買い手側がそれぞれ希望を登録し、お互いの条件をM&A仲介業者が確認しながら照らし合わせをしてもらうことができます。仲介業者が間に入ることによって、M&Aが初めての人にとっても利用しやすい環境が整っているといえるでしょう。アフターフォローもしてもらえるので安心です。M&A専門会社に依頼をして、手続きを代行してもらう方法もあります。

この方法の場合、事前の相談から買い手や売り手探し、M&Aの際に必要な手続きなど、最終契約に至るまでの一切を任せることができるのです。条件交渉や法務、労務といった専門的な手続きまでも依頼することができるので、詳しいことが分からないという方でも気軽に利用することが可能です。

個人がM&Aを行うときの注意点

個人がM&Aをおこなうときの注意点として、M&Aには、事業譲渡や株式譲渡といった方法があるので、それぞれの違いをきちんと理解しておく必要があるということが挙げられます。事業譲渡は企業の事業の部分だけ買収するという方法のことを指し、株式譲渡では企業の株式自体を買収するという方法のことを指します。どちらを選択するのかによっても、リスクが変わってくるので、よく考えて選択する必要があるでしょう。

事業譲渡の場合では、従業員や取引先、顧客に対して新たに契約を結ぶ必要があるのです。会社の所有者が変更される株式譲渡と異なり、事業譲渡では、買収しても従業員や顧客がすべて承継できない可能性があるということです。また、許認可も引き継がれないため、譲渡対象となる事業が人材派遣や介護などの許認可を必要とする場合は、新たに申請を行うコストや許認可を受けられないリスクも考慮しておく必要があるでしょう。

一方、株式譲渡をおこなう際の注意点としては、会社の債務や契約事項がすべて引き継がれるため、事前調査では見つからなかったトラブルが発生する可能性があるということです。また、上場企業のM&Aと違い、株式の流動性を期待できない中小企業の株式は簡単に譲渡できるものではないため、とりあえずの資金調達の手段としておこなうのは、やめた方が良いでしょう。

なお、個人M&Aや小規模の場合は専門的な弁護士に依頼せずに話を進めていくケースも多くありますが、専門的な知識がないと判断に迷うこともあるかもしれません。誤った判断を下さないために、個人でM&Aをおこなう場合であっても弁護士などの専門家に相談した方が良いかもしれません。

個人が事業承継をするときの具体的な方法

個人が事業承継をするときの具体的な方法に関してですが、個人が知り合いに事業承継をおこなうときには、贈与か譲渡かによって手続きが異なります。譲渡とは財産や各種権利を第三者に譲り渡すことであり、無償の場合は贈与となるのです。有償で取引がおこなわれる場合には買収といいます。口約束のように、口頭で言っただけでは事業の承継はできず、事業を承継する方は、開業届けをはじめ、さまざまな手続きをおこなう必要があるのです。

しかし、個人事業には承継という概念がないため、譲渡側は廃業届や青色申告を承継しない場合は青色申告の取りやめ届出、予定納税額の減額申請書を提出すれば良いでしょう。譲受側は開業届を出せば良いです。屋号を引き継ぎたい場合は、開業届けに屋号を記入したり、商号登記がおこなわれている場合は名義変更をおこないます。法人の場合のように複雑な手続きは不要です。

なお、事業譲渡は譲渡する相手を見つけないことには話が進まないのですが、知り合いなどでは譲渡相手が見つからない場合、M&AマッチングサイトやM&A専門会社を利用するのも良いでしょう。M&AマッチングサイトやM&A専門会社では、小規模のビジネスも取り扱っているので利用を検討してみて下さい。

事業承継に取り組む際に気をつけるべき点

個人間での事業承継の場合は、無償で譲渡する場合でも譲受側に贈与税が発生する可能性もあります。贈与税は預貯金など現金以外の部分を時価で計算し、資産と債務合わせて110万円以上の場合に発生すると決められています。なお、年間110万円以下の場合は基礎控除になるようです。

贈与税率は国税庁のホームページで確認できるので、あらかじめどれくらいの税金が発生するのか算出しておくと良いでしょう。また、非公開会社のような「譲渡制限株式」を発行している会社の場合であれば、「売渡請求権」について注意しておく必要があるでしょう。

売渡請求権とは、株式を取得した人に株式の売り渡しを請求し株主総会で特別決議を得ることによって、その株式を取得することができるというものです。場合によっては経営権がうまく移行されない場合もあるので、専門家に相談することが大切です。

M&Aのデメリットも押さえておく

M&Aのデメリットとしては、会社買収の場合、後から簿外債務が発覚してトラブルに発展してしまったり、事業を買収した効果が薄かったりするケースがあるということが挙げられます。買収の場合は、買収に伴って人材の流出が起きていたり、それぞれ企業文化が異なる人たちが集まることで団結できないなどの問題が生まれることが原因といわれています。

事業譲渡の場合は負債をどう処理するかといった点が大事になるため、債権者との交渉も必要になるでしょう。なお、譲渡の場合は譲渡益という部分に税金がかかってしまうので、税金に関する知識を持った専門家に相談しておくと良いでしょう。

時間をかけて準備を整えることが肝心

M&Aは時間をかけて取り組むことが肝心であるといえるでしょう。M&Aは安易におこなってしまうと、後から思いがけないトラブルに巻き込まれてしまう可能性もあります。そのため、そのようなトラブルに巻き込まれないためにも、時間をかけて準備を整えておく必要があります。また、税金面については専門家に相談して、あらかじめ、どの程度の税負担になるのかを見極めておくことも必要です。

個人事業のM&Aであっても、M&A専門会社などに相談するほうが労力や時間を節約できます。M&Aの手続きの中には、専門的な知識を必要とするものもあります。よく分からないまま進めると、誤った判断をしてしまったり、損をする可能性もあるでしょう。専門家のアドバイスを受けながら進める方が安心です。

専門家の協力を仰いでみよう

M&Aを行うときには検討すべき事項が多岐にわたるので、専門家の協力を仰ぐのが大切になります。会社や事業を買収・売却する際は、SKC会計グループのSKC北九州M&Aセンターに相談してみるのが良いでしょう。SKC北九州M&Aセンターのホームページでは、北九州を中心とした地元のM&A案件の情報を掲載しています。また、M&Aを事業承継、事業発展の1手段として捉え、経営計画策定を中心とした企業価値を高める幅広い支援をおこなっている点も特徴です。ぜひ利用を検討してみて下さい。

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